昔々、ある所に貧しい老夫婦が住んでいた。ある冬の雪の日、老爺が町に薪を売りに出かけると、猟師の罠にかかった一羽の鶴を見つける。かわいそうに思った彼は、鶴を助けた。激しく雪が降り積もるその夜、美しい娘が夫婦の家へやってきた。

貧しい老夫婦が猟師の罠にかかった鶴を助け、美しい娘が現れる。

鶴の恩返し【睡眠朗読】

東京から2人の青年紳士が山奥に狩猟にやってきた。しかし、一向に獲物は現れず、案内役の専門の猟師ともはぐれてしまう。2人が諦めて宿に帰ることを決め、腹が減ったなどと話していると、山中で「西洋料理店 山猫軒」との看板を掲げた西洋風の一軒家を発見する。

東京から来た2人の猟師が山奥で迷子になり、西洋風の料理店を発見する。

『注文の多い料理店』　作：宮沢賢治

蟹がおにぎりを持って歩いていると、ずる賢い猿が、拾った柿の種と交換しようと言ってきた。蟹は最初は嫌がったが、「おにぎりは食べてしまえばそれっきりだが、柿の種を植えれば成長して柿がたくさんなりずっと得する」と猿が言ったので、蟹はおにぎりと柿の種を交換した。

蟹と猿がおにぎりと柿の種を交換する話。

猿かに合戦　作：楠山正雄

むかしむかしあるところに心優しいお爺さんと欲張りなお婆さんの老夫婦がいた。ある日、お爺さんは怪我をしていた雀を家に連れ帰って手当てをした。山に帰そうとしたが雀はお爺さんにたいそう懐き、お爺さんも雀に情が移り、名をつけて可愛がることにした。しかし、雀を愛でるお爺さんの様子をお婆さんは面白くなく思っていたーーー。

心優しいお爺さんが雀を手当てして、可愛がるが、欲張りなお婆さんが雀に嫉妬する。

昔話・舌切りすずめ　作：楠山正雄

今年八つの一郎さんと、六つのたえ子さんとを、気だての優しい婆やが、一人でお守りをしておりました。その婆やが或日のこと、お里へまいりました時、かわいいかわいいひばりの子を一つ袂のなかへ入れてかえりました。

八つの一郎と六つのたえ子を守る優しい婆やが里に帰る途中、可愛いひばりの子を拾う。

【睡眠朗読】ひばりの子　作：岡本かの子

幻想性の色濃い作風で知られる昭和初期の作家、夢野久作の短編小説。初出は「九州日報」［1922（大正11）年］。ある晩、きのこ達が集まって談話会を催す。

昭和初期の幻想作家、夢野久作による短編小説「きのこ談話会」。

【睡眠朗読】きのこ会議　作：夢野久作

【あらすじ】雪の降った翌日、神さまは子どもたちと遊ぼうと野っぱらにやってきました。すると調子にのってうっかりと神さまは顔を雪にうつしてしまったのです。さあ大変！

神さまが雪で顔をうっかりうつしてしまい、子どもたちが大騒ぎになる。

【睡眠朗読】子どものすきな神さま　作：新美南吉

昭和前期に活躍した小説家、林芙美子の童話。【あらすじ】飢饉の続いた村を見捨てて旅立っていった鶴たちのあとに、足の悪い鶴とその妻が残された。ある日足の悪い鶴が沼の中から笛を見つけ吹いたところ、心の洗われるようないい音。

飢饉後の村で残された足の悪い鶴と妻が、沼で心の洗われる音を見つける童話。

【睡眠朗読】鶴の笛　作：林芙美子

この少年は、名を知られなかった。私は仮にケーと名づけておきます。ケーがこの世界を旅行したことがありました。ある日、彼は不思議な町にきました。この町は「眠い町」という名がついておりました。見ると、なんとなく活気がない。また音ひとつ聞きこえてこない寂然とした町であります。

眠い町に旅行した少年ケー、町は活気がない、音もない。

眠い町　作：小川未明

それは、寒い、寒い冬の夜のことでありました。空は、青々として、研がれた鏡のように澄んでいました。一片の雲すらなく、風も、寒さのために傷んで、すすり泣きするような細い声をたてて吹いている、秋のことでありました。

冷たい冬の夜、青々とした空の下、風が寒さを訴える秋の夜。

ある夜の星たちの話　作：小川未明

美しい翼がある天使が、貧しげな家の前に立って、心配そうな顔つきをして、しきりと内のようすを知ろうとしていました。外には寒い風が吹いています。星がきらきらと枯れた林のいただきに輝いて、あたりは一面に真っ白に霜が降りていました。天使は見るもいたいたしげに、素跣で霜柱を踏んでいたのであります。

貧しい家の前で心配そうな顔をした美しい天使が、寒い風の中で霜柱を踏んでいる。

【睡眠朗読】いいおじいさんの話　作：小川未明

ある秋の土曜日、一郎少年のもとに、下手くそで間違いだらけの文で書かれた怪しい葉書が届く。翌日面倒な裁判があり、ぜひ出席してほしいという内容で、差出人は、山猫だった。

山猫からの怪しい葉書で、一郎少年は面倒な裁判に出席を求められる。

『どんぐりと山猫』　作：宮沢賢治　朗読

【あらすじ】雪の朝、表を走り回って帰ってきた子狐の冷え切った手を握りながら、母さん狐は手袋を買ってやろうと思いついた。夜になって町に出かける途中で、母さん狐は子狐の片手を握って人間の子供の手に変えた。

子狐の手を冷やさないために、母さん狐は手袋を買いに出かける途中で子狐の手を人間の手に変えた。

【睡眠朗読】手袋を買いに　作：新美南吉

寒い寒い冬の初めのある日、旅立ちの日がやってきました。今日は、いちょうの実たちが母親のいちょうの木のもとを一斉に離れる日です。いちょうの実の一つ一つが、それぞれに夢を抱いて旅立ちの時を待ちます。

冬の寒い日、いちょうの実たちが母親の木を離れて旅立ちの日。夢を抱いて待つ。

【睡眠朗読】いちょうの実　作：宮沢賢治

【あらすじ】むかしむかし、あるところに心優しいひとりのおじいさんが住んでいました。ある日、おじいさんは芝刈りからの帰り道、子狐が木の実を取ろうと悪戦苦闘しているところに出くわします。見かねたおじいさんは、代わりに木の実を取ってあげると、子狐は大喜びで帰っていきました。

心優しいおじいさんが子狐を助けると、子狐は大喜びで帰っていく。

【睡眠朗読】昔話『聴き耳ずきん』

ある山里に心優しい老夫婦と、その隣人に欲張りで乱暴な老夫婦が住んでいた。優しい夫婦が傷ついた子犬を見つけて飼うことにし、わが子のように大切に育てる。

山里に住む心優しい老夫婦が、傷ついた子犬を拾い大切に育てる。

花咲かじじい　作：楠山正雄

【あらすじ】むかしむかしあるところにおじいさんとおばあさんが暮らしていました。畑仕事をしているおじいさんは、逃げ足の速いタヌキのいたずらに悩んでいました。ある日、仕掛けた罠にタヌキがかかり、喜び勇んでタヌキ汁にしようと持ち帰ります。

おじいさんとおばあさんはタヌキのいたずらに悩み、タヌキがかかった罠でタヌキ汁を作ろうとする。

昔話『カチカチ山』　作：楠山正雄　朗読

さびしい野原の中なかに一本の木立がありました。見渡すかぎり、あたりは、まだ一面に真っ白に雪が積もっていました。そして、寒い風が、葉の落ちつくしてしまった枝を吹くのよりほかに、聞こえるものもなかったのです。

寒い風が吹き、一面に真っ白な雪が積もるさびしい野原の中に一本の木立があった。

【睡眠朗読】春が来る前　作：小川未明

よだかは、実にみにくい鳥です。ーーーよだかは、美しいはちすずめやかわせみの兄でありながら、容姿が醜く不格好なゆえに鳥の仲間から嫌われ、鷹からも改名を強要され、故郷を捨てる。

よだかは美しい鳥の兄だが、容姿が醜く嫌われ改名を強要され故郷を捨てる。

『よだかの星』　作：宮沢賢治　朗読

【あらすじ】むかし、むかし、ある倉で暮らす裕福なねずみの夫婦がいました。産まれた子ねずみは女の子で、蝶よ花よと愛情いっぱいに育てられ、やがて並ぶ者がいない日本一美しいねずみの娘に育ちました。ねずみの夫婦は娘のあまりの美しさから、「ねずみの中には娘の婿にふさわしい者はいない。日本一美しい我が娘にふさわしい、偉い婿を探さねば」と考えました。

豊かなねずみの家族が美しい娘のために日本一の婿を探す。

昔話『ねずみの嫁入り』　作：楠山正雄　朗読

「日本のアンデルセン」と呼ばれた小川未明の、美しい夜のお話です。 月のきれいな春の夜のこと、おばあさんが一人、針仕事をしています。 すると、見知らぬ男がやってきて･･･。

「日本のアンデルセン」と呼ばれた小川未明の美しい夜のお話。おばあさんが針仕事をしていると、見知らぬ男がやってくる。

【睡眠朗読】月夜とめがね　作：小川未明

日本のおとぎ話のひとつ、わらしべ長者のお話。 【あらすじ】昔、ある一人の貧乏な男がいた。毎日真面目に働いても暮らしが良くならないので貧乏から何とかして逃れようと観音様に願をかけたところ、「初めに触ったものを、大事に持って旅に出なさい」とのお告げをもらった。男は観音堂から出るやいなや石につまずいて転び、偶然1本の藁に手が触れた。

貧しい男が観音様からのお告げを受け、藁を大事に持って旅に出る。

【睡眠朗読】昔話『一本のわら』　作：楠山正雄

奉公をしているおみつのところへ、田舎の母親から小包がまいりました。あけてみると、着物がはいっていました。そして、母親からの手紙には、 「さぞ、おまえも大きくなったであろう。そのつもりでぬったが、からだによくあうかどうかわかりません。とどいたら、着てみてください。もしあわないようでしたら、夜分でもひまのときに、なおして着てください。」と、書いてありました。

田舎の母親からの小包には着物が入っており、母親がおみつによく合うように直して着て欲しいと手紙が添えられていた。

【睡眠朗読】田舎のお母さん　作：小川未明

大正期に活躍した「新思潮派」の作家、芥川竜之介の短編小説。横須賀駅から乗った汽車での「私」と故郷から奉公に行く娘とのひと時を、作者の体験をもとに描いている名作。

大正期の名作短編小説、芥川竜之介の「横須賀物語」。作者の体験を元に、汽車でのひと時を描く。